史上最高エネルギーのニュートリノを観測、地中海の深海に設置された検出器が捉えた宇宙の痕跡
#生活 2025.2.26

イタリアやフランスなどの国際研究チームが、地中海の深海に設置したニュートリノ検出装置で、観測史上最高のエネルギーを持つニュートリノを捉えた。発表は英科学誌「ネイチャー」に掲載され、研究者たちは宇宙の奥深くから届いたこの粒子の正体に注目している。ニュートリノは、物質をほとんど透過する素粒子の一種で、「幽霊粒子」とも呼ばれる。宇宙で発生する超高エネルギー現象の痕跡を調べる手がかりとして、長年にわたり観測が続けられてきた。しかし、その性質上、直接検出するのが極めて難しく、観測には大規模な設備が必要とされる。今回の観測に使用されたのは「KM3NeT」と呼ばれるニュートリノ望遠鏡だ。地中海の水深約3500メートルに設置されており、水中でニュートリノが原子と反応して発する微弱な光を捉える仕組みになっている。2023年2月、KM3NeTの一部がまだ未完成の状態で稼働していたにもかかわらず、極めて高いエネルギーを持つニュートリノが確認されたのだ。そのエネルギーは約220ペタ電子ボルト(PeV)で、これまで観測された値の約30倍に達した。人類が作り出せる加速器のエネルギーをはるかに超える規模である。このニュートリノの発生源は銀河系の外にあると考えられているが、正確な起源は不明のまま。研究チームは今後、さらなるデータの収集と解析を進め、発生源の特定を試みるとしている。